立正安国論(2)

守護国家論はまことに論理的で体系的な、いわば論文であり、これを読み内容を理解できる人間は学識のあるものに限られましょう。

よって、自分の考えを民衆に向けて書いたという書ではなく、学僧や仲間に向けたものと考えられます。

一方の立正安国論は、主客問答により、なるほどとなっとくしながらストーリーを追う感じがあり、学者向けというより、専門外の人に日蓮さんの考えを分かってもらうような書き方が為されています。

立正安国論は、実際に前執権である北条時頼に対面し、自身の考えを伝え、直接手渡したとされています。

それだけ日蓮さんは注目されていて、会って話を聞こうということだったんですね。

しかしながら、周囲からみれば、念仏宗を弾劾する内容のこの書を幕府に奏上したことにより、日蓮さんは、ただの学僧にとどまる存在ではなくなり、危険な存在と目されるようになってしまいました。