立正安国論(1)

守護国家論を書いた翌年には、
「旅客来たりて嘆きて曰く・・・」ではじまる
有名な立正安国論を書きました。
こちらは戯曲のように、主人と客との問答形式により、現在の事実関係を整理し、その上で経文に説かれている災厄のうち、内乱が起きる、他国から侵略を受けるという災いがまだ起きていない。
したがって、守護国家論で述べたように、釈尊の根本の教えである法華経をさしおいている現状を正さない限りは、まもなくそれが現実となると警告しています。

鎌倉にて熱心に布教をつづけていた日蓮さんには、しだいに帰依する信者が増えていきましたが、念仏宗禅宗を信奉する勢力からは妨害行為を受け、怪我を負わされることもありましたので、しだいに日蓮さんとしても、非暴力を貫くものの、ますます信念を徹底させて、他宗徒へ改心を迫る説法となっていったことでしょう。

この立正安国論という書物は時の前執権、北条時頼に奏上されましたが、幕府側はこれに対してなにも反応することはありませんでした。

しかしながら、念仏宗禅宗の権力とのむすびつきは、つまり幕府による日蓮さんとお弟子さんたちへの弾圧という形になってくるのでした。